帯広でジャズを流して30年の歴史が醸し出す風格
JR帯広駅北口のバスタータミナルを抜けて通りを1本渡ったところ、「十勝ガーデンズホテル」の向いにジャズバー「PAGE1」がある。
店名が大きくあし らわれた石造りふうの1階入り口の扉をあけて階段を上がると、2階にはマスター所有のウッドベースとチャールズ・ミンガスなどベーシストたちの写真がディ スプレイされたエントランスが出迎えてくれる。
創業は1988年。「ジャズ喫茶をやるつもりは最初からなかったですね。ジャズバーでいこうと」とマスターの山下敦さん。若いころはギターに熱中していてロックやフォークを演奏していたが「ジャズを聴いてベースを始めたんです。それまでカッコいいなと思うベースはいっぱいあったけど、美しいと感じたのは初めてでした。24,5 歳のころ」と山下さん。
ベースはいまでもたまに店で弾くことがある。「ついこの前も、お客さんの還暦祝いのときにここで弾かせてもらいました」。
店の壁にディスプレイされた数々のレコードジャケットは、マスターのジャズ遍歴をさりげなく伝えてくれるちょっとマニアックなものばかり。
「CDもありますが、ほとんどレコードをかけます。スイッチの切替えとか、めんどうくさいんで(笑)。東京には8年ほどいたことがあって、東京のジャズ喫茶にはよく通いました。そのころにちょうどディスクユニオンができて、ここにあるレコードの半分ぐらいはそのときに買ったものなんですよ。うちにあるのは、60年代からCD化が始まる80年代始めごろまでのものがほとんどです」
2階あたりの高いところにJBL4343を置いてあるが、客が少ないときはカウンター奥の棚の上のミニスピーカーを鳴らしている。
36席と広い店内をマスターが独りで仕切る。お客さんも独りで来ることが多いという。
帯広にはかつて「ジャズ・オーディオ」という、上京前の中島みゆきが常連だったことで知られるジャズ喫茶があった。
「いまは帯広にはジャズ喫茶はないです。ライブハウスが数軒。ここは駅前ですが、街の中心からはちょっと遠いので夜は人通りがあまりないんですよね。再開発される前のほうがもうちょっと通りも明るくて、この店の存在もわかりやすかったようなんですけど」
ウェイン・ショーターの名作にちなんだ「アダムズ・アップル」など、ジャズ由来のネーミングのオリジナル・カクテルが豊富で、これらは山下さんが独学で研究して創りだした。
店の名前はジョー・ヘンダーソンのブルーノートの代表作から拝借したものだ。(了)
※「PAGE1 」は2021年2月に閉店しました。
写真・文 楠瀬克昌
PAGE1 ページワン 2021年閉店
- 店主:山下敦/創業1988年
- 住所:北海道帯広市西一条南11-19武山ビル2F
- アクセス:JR根室本線帯広駅北口徒歩3分
- 営業時間:月〜土 18:00〜翌1:00(L.O1:00 ) (休:日曜)
- 席数:36席
- 所有ディスク数:LP 、CD2,500枚
- メニュー:カクテル各種600円〜 チャージ600円
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